Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか
Brian W. Fitzpatrick Ben Collins-Sussman
オライリージャパン
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昔からこういった技術書の読み物は好きでよく読んでいたのだけれども(O’Reillyだと特に!),ことさらリーダーシップだのチームワークだのいった人間関係に関する話題は興味が持てず,苦手だった.リーダーは長期的目標を立てろとか,部下を細かくマネージメントするのではなくなるべく自発的にやらせろとか,至極まっとうなことをただ言っているだけに思えて仕方がなかったからだ.「Team Geek」もその1冊だった.時々挟まる絵はキャプションを含めて意味ありげで面白いけれども,個々の話題も短く各トピックがまとまりに欠けているように思えて,流し読みしてすぐ本棚行きだった.

しかしながら,今あらためて本書を読むと様々な発見があり,純粋にとても面白いと思える.きっと昔読んだ時点から今に至るまでの間に,色々と人間関係やチームでの仕事を経験したからだろう.必要になって初めてわかることばかりだ.結局は,人間頭ではわかっていてもできない事が多い,または複雑な状況や思い込みによって問題が歪められて見える,といった不完全さがあるのだ.

「Team Geek」は一言で言えば,Googlerの書いたチームマネジメント本だ.エンジニア集団であるGoogleにおいて,エンジニアがチームでソフトウェア開発にコミットしていく時の心得や考え方が書かれている.

1章ではエンジニア個人に焦点を当てて,一人ではソフトウェア開発はできないこと,あまりに完璧なものを求めたり,天才を信奉したりといったありがちな考え方が示される.そして,個人が持つべき3つのソーシャルスキルである謙虚・尊敬・信頼(頭文字を取ってHRT)を提言し,以降この3つの軸をもってしてチームとしての働き方が解説される.

2章ではチームの文化が取り上げられる.チームできちんとした文化が醸成できているだろうか?不要なミーティングややり取りで疲弊していないだろうか?そういった点から文化の大切さ,目に見えないチームワークの骨組みを洗い出す.

3章はチームリーダーになった(なってしまった)ときの対処法だ.個々のメンバーの技術があり,チームの文化がよく機能していたとしても,チームを一つの目的に向かって推し進める推進力をリーダーは創りださねばならない.そのときにどう動けばいいのか,逆に嫌で無能なマネージャーを思い浮かべた時にアンチパターンとしてどんな特徴があるかが書かれている.

4章からはチーム内外での有害な人の取り扱い方としての大人な対応方法,5章ではチームを包括するもっと大きなチームである組織についてのつきあい方,6章ではチーム/組織がつくり上げたソフトウェアを実際に使うユーザの考え方に触れられている.

以上が本書の大まかな流れとなっている.話題としては組織論やコミュニケーション方法といったような,そもそもエンジニアの気質として難しかったり,形としては存在しないあやふやなものばかりだけれども,本書は非常に軽い口調でおもしろおかしく書かれており,具体例も多い.著者らのユーモアのセンスに長けているということもあり,そもそもエンジニアに向けたの本ということもあり,エンジニアならばにやっと笑えるところが多い.軽い感じで読めて,各章の関連性もないからどこからでも読むことができる(1章HRTは理解したうえで).

エンジニアならエンジニアらしくGeekなシステムや方法で解決しようじゃないか,そういったGeekへの愛と信頼ある本だった.